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不動産オーナー税理士が語る不動産投資と税金の実践的アドバイス

スリーアローズ税理士事務所
代表税理士 三矢清史氏

不動産所得赤字で税金が還付される確定申告は要注意

2023年2月13日

令和5年に入り令和4年の確定申告の集計を行う時期になりました。
今回は赤字の不動産所得によって損益通算をして給与所得等の税金を還付する確定申告となった場合の注意すべき点をお伝えします。
不動産所得が赤字となる確定申告について、気を付けるべきポイントは2つあります。


ノートと計算機イメージ

1. 青色申告特別控除が使えない

不動産オーナーの確定申告上下記適用要件を満たすことにより、一定額を不動産所得から控除することができます。

適用要件 10万円控除 55万円控除 65万円控除
青色申告申請書提出
五棟十室基準の規模を満たす  
簿記による記帳  
貸借対照表提出  
電子帳簿保存か電子申告を行う    

 

注意すべきはこの特別控除は“控除”なので、控除する所得がなければ使えません。
規模も満たして苦労して帳簿作成を行ったものの、そもそも不動産所得自体が赤字であれば、控除対象となる所得がないため使えません。
赤字物件を売っている営業マンは一部屋よりも二部屋、二部屋より十部屋買ってもらうために、「十部屋以上保有して青色申告特別控除55万円ないし65万円を使いましょう」とお客様に営業トークをかけてきます。しかし、そもそも赤字物件ですので、十部屋保有しようが、千部屋保有しようが赤字なので控除する所得がないため使えません。にもかかわらずこんな営業トークが飛び交っていますので、皆様には注意していただきたいポイントになります。
なお、不動産所得以外に事業所得がある場合などは、不動産所得が赤字で特別控除が使えなかったとしても、事業所得が黒字であれば事業所得から控除できますのでその点はご安心ください。


2. 土地に対する借入金利子が全額経費計上できない

バブルの時代、土地を買い占めて転売する不動産業者の方が融資を使って土地を購入した際に、転売を行って利ザヤを稼ぐだけではなく、その土地の利息をもって不動産所得を赤字にし所得税の還付を受けるというケースも多発していたそうです。
その結果不動産価格は上昇して本当に不動産を購入したい人が買えないということになったため、規制をかける意味も込めて『土地等を取得するために要した負債の利子の額の損金不算入』という制度が設けられました。
 簡単に説明すると、不動産所得が赤字の場合、土地を購入するために借りた融資に対する利子の経費計上に制限を設けるというものです。その結果、赤字幅が少なくなり、所得税の還付額が減少することになります。


◆算式◆

① 不動産所得の赤字
② 土地取得のために要した負債に対する利子がある
③ ①の赤字と②の利子のいずれか少ない金額が経費不算入


◆具体例◆

土地取得費:1億円 建物取得費:1億円 借入金残高:1.5億円 支払利子:300万円 不動産所得の赤字:200万円

① 不動産所得の赤字 200万円
② 土地取得のために要した負債利子に対する利子
 支払利子300万円×土地対応分の借入金5000万円※÷(建物対応分の借入金1億円+土地対応分の借入金5000万円※)=100万円
 ※借入金残高1.5億円-建物対応分の借入金1億円=5000万円(土地対応分の借入金)
③ ① > ②  ∴100万円が経費不算入


不動産所得を赤字にして所得税を還付するという手法は広まっていますが、このようなデメリットも潜んでいます。 その結果、思ったよりも税金が還付されず、また、不動産が赤字ということでお金が貯まらないという可能性もあります。
お金を残すために節税をしようとしたものの、赤字を作ったためにお金を減らすという本末転倒なことにならないように注意してもらいたいものです。


Youtube動画でも解説をしていますので、ぜひそちらもご覧ください。

1.青色申告特別控除が使えない
https://youtu.be/40CiihLr6O0

2.土地に対する借入金利子が全額経費計上できない
https://youtu.be/WPzx4Ct_DXE

 

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連載を担当させて頂くことになったスリーアローズ税理士事務所の三矢と申します。
当事務所は顧問先の多くが不動産業者・地主家主・投資家・サラリーマン大家というような不動産を所有されている方という一風変わった会計事務所です。
そういうこともあり、不動産所得や譲渡所得、相続税の申告等を多く担当させて頂いていますが、申告結果=成績表と考えると、多くの方のリアルな数字を見させていただいてるのではと実感しております。
この連載において、そのあたりを踏まえた不動産の現状や、不動産と税金の関係などの実態をお伝えしていきたいと思います。


リーマンショック直後は不動産の相場は大幅に崩れ、国も税制改正で不動産についての優遇制度を設けるなど躍起になって停滞する市況に歯止めをかけようとしていました。
その後のアベノミクスと低金利の金融市場を背景に、不動産取引は活発化し、その様相はまさにバブルの再来に近いものがありました。 それこそ1990年初頭のバブル期とことなり、今回の不動産市場の主役はサラリーマン大家をはじめとする個人投資家ではないでしょうか。 おりしも将来の年金不安や、平成27年改正による相続税増税による土地活用ブーム、いろいろな要素が織り交ざって今の熱い不動産市況が生まれました。
しかし、昨年はシェアハウス問題に、その悪質物件に率先して融資をしていたスルガ銀行問題、そしてレオパレス21をはじめとする大手建築による違法建築など暗いニュースが連続しました。
不動産を持てば右肩上がりでうまくいくというわけではない現状、せめて失敗しないようにするためのヒントになるようなことをこちらでお伝えできればと思います。

三矢清史氏 プロフィール

昭和53年5月生まれ 滋賀県高島市出身

経歴

平成14年9月 妹尾公認会計士事務所入社(現 ひょうご税理士法人)
平成27年2月 税理士登録 登録番号129125
平成27年9月 ひょうご税理士法人退職 スリーアローズ税理士事務所開業

趣味

城巡り・スノーボード・釣り・サバイバルゲーム

座右の銘

『成功したければ、踏み均された道を選ぶな』
三国志の魏の曹操の言葉。ありきたりの踏みならされた道を行くのではなく、険しい道、新しい道をあえて進むべきという意味。
『志は当に高遠に存ずべし』 三国志の蜀の諸葛孔明の言葉。志は高く持たなければならないという意味。

スリーアローズ税理士事務所 https://3arrows-tax.jp/